この家の家族は、親戚みんなで集まるからということで都内の旅館に宿泊へ行った。
我輩は、つまらぬ会話しかできぬジョン公と二人で家にいるのも嫌だったので、旅館の方へ行ってみた。この家の家族の親戚にどんな人間がいるかも、やや興味のあるところであった。
旨そうな料理の並んだ座敷を襖の間から覗き込むと、20人ほどの人間がいた。そして、その中の一人が演説のような言葉を述べている。誰かと思ったら、以前にも紹介したことのある元校長たる爺であった。
が、その話の硬いこと、そして長いこと。「ええ、本日はこうしてお集まり頂き誠にうれしい限りでございます。」などと言い、五分も十分もどうでもいい話をしている。
それにしても、旨そうな魚を目前にしながら、こんなつまらぬ話を聞いていられる人間の忍耐力には、やや敬服したものである。ここが我が猫族を始めとした動物と人間の大きな相違点であろうか。
やっと爺公の話が終了し、みながやっと飯にありついた頃、
「それじゃあ、還暦祝いの言葉を一つ、お三方に言ってもらいましょうか。」
と、この家の母親の母親、即ち、ばあ様が言う。ばあさんの言う三人とは、今年で60才を迎えたトウヘンボクと、同じく60を迎えた近所の親戚の叔父公二人らしい。
まず、トウヘンボクの隣に座っていた叔父公が「では。おれから。」と立ち上がり、話しだした、、、。 (続く)

