2006年09月09日

お盆にて親族集まる(1)

 お盆のことである。

 この家の家族は、親戚みんなで集まるからということで都内の旅館宿泊へ行った。

 我輩は、つまらぬ会話しかできぬジョン公と二人で家にいるのも嫌だったので、旅館の方へ行ってみた。この家の家族の親戚にどんな人間がいるかも、やや興味のあるところであった。

 旨そうな料理の並んだ座敷を襖の間から覗き込むと、20人ほどの人間がいた。そして、その中の一人が演説のような言葉を述べている。誰かと思ったら、以前にも紹介したことのある元校長たる爺であった。
 
 が、その話の硬いこと、そして長いこと。「ええ、本日はこうしてお集まり頂き誠にうれしい限りでございます。」などと言い、五分も十分もどうでもいい話をしている。

 それにしても、旨そうな魚を目前にしながら、こんなつまらぬ話を聞いていられる人間の忍耐力には、やや敬服したものである。ここが我が猫族を始めとした動物と人間の大きな相違点であろうか。

 やっと爺公の話が終了し、みながやっと飯にありついた頃、

 「それじゃあ、還暦祝いの言葉を一つ、お三方に言ってもらいましょうか。」

 と、この家の母親の母親、即ち、ばあ様が言う。ばあさんの言う三人とは、今年で60才を迎えたトウヘンボクと、同じく60を迎えた近所の親戚の叔父公二人らしい。

 まず、トウヘンボクの隣に座っていた叔父公が「では。おれから。」と立ち上がり、話しだした、、、。   (続く)
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2006年09月07日

不倫物語〜終わり〜

 長きに渡り、不倫物語と題して書き連ねてきて、ここにおいて終止符を打とうと思うのであるが、実は、終わり言えるような完結的な出来事はないのであり、ただ、この家の父親と母親の間に冷たい雰囲気が漂っているだけなのである。

 トウヘンボクはといえば、呑気に詩などを書いている。何の詩かと思って覗き込んでみたら、宮沢賢治氏の『雨ニモ負ケズ』という詩が書かれた紙の横に絵を書いている。

 我輩は、呑気にしているトウヘンボクにどことなく腹が立ったものだから、トウヘンボクが部屋から出て行った隙に、落書きをすることにした。宮沢賢治氏には申し訳ないが、ちと詩の内容を訂正してみたものである。

 『雨にも負けず』

雨にも負け

風にも負け

雪にも夏の暑さにも負け

丈夫な不潔なからだをもち

慾はなく勿論あり

決して怒らずばれぬよう

いつも静かに笑っている女とメールをしている



一日に玄米四合と

味噌と少しの野菜猫の餌を食べ

あらゆることを

自分を勘定に入れずに

よく見聞きし分かったと思ったが

そして忘れず全部忘れた


野原学校の松の林の陰の

小さな萱ぶきの鳥のフンだらけの小屋にいて

東に病気の子供生徒あれば

行って看病カンチョウしてやり

西に疲れた校長あれば

行ってその稲の束を負い禿げ頭を撫で

南に死にそうな教頭あれば

行ってこわがらなくてもいい生徒も喜びますよといい

北に喧嘩や訴訟があれば

つまらないからやめろといいどれどれと見に行く




日照りの時妻に怒られては涙を流し

寒さの夏はおろおろ歩き

みんな家族でくのぼーとうへんぼくと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず馬鹿にはされて

ついでに子供にも相手にされず

そういうものに

わたしはなりたいおぬしはなっている


 我輩は、書き終わると一目散に逃げた。その後、部屋に戻ってきたトウヘンボクがどう思ったかは我輩の知ったことではない。   (完)
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2006年09月01日

不倫物語〜その7〜

 最近、トウヘンボクは、よく家の中を掃除している。タンスの中の服を取り出しては、一枚一枚丁寧にたたんだり、物置の中を整理したり、車のトランクの中を掃除したりしている。

 我輩は、最初、トウヘンボクはこんなにきれい好きだったかなと疑問に思ったのであるが、少し考えて、ははーん、そういうことか、とその似合わぬ行動の理由に気づいたのである。

 トウヘンボクは、この家の母親に掴まれた己の不倫の証拠たるカセットテープを探し出そうとしているのである。

 大体、この家の母親から着替えを出されぬ限り延々と同じをパンツを履き続け、背広の肩にはフケが目立ち、髪もモジャモジャであるトウヘンボクのような人間が、自主的に掃除を開始するはずがない。

 もし、あちこちと部屋の中を探し始めれば、「何探してるの?」と次女などに聞かれるかもしれぬから、誰にも気づかれぬように穏便な方法で捜査しているというところであろう。

 一見、掃除という善行に見せかけているところが、狡賢いものである。

 まさか、この我輩にもう見破られているとは、思いもしないであろう。我輩はお前如きのする行動なぞ、すべてお見通しなんや。黙ってて欲しければ、キャットフードの品質をレベルアップしろや。我輩の餌代、ケチるなや。
 (続く)
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2006年08月30日

不倫物語〜休憩〜

 不倫如きものに、過去6回も使ってしまった。我輩も、こんなつまらないものに、いつまでも時間を使うほど愚かではない。最大でも〜その8〜までで書ききろう。

 そして、その後は、お盆での出来事でも書いてみようか。  (休)
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2006年08月27日

不倫物語―その6―

 トウヘンボクといえども、一応我輩がこの家に住むことを許可してくれたという意味で、我輩の一応の恩人とも言え、あまりトウヘンボクの責ばかりを書いているのも悪いかも知れぬから、トウヘンボクにとって助け舟となるようなことも報告しようと思うのである。

 それは、些細なことかも知れぬが、こんなことがあった。我輩は、この家の母親と長女が会話をしているのを聞いただけであるが、、、。

 「あんたはどっちの味方なんだ?」

 この家の母親が長女にたずねる。

 「お父さんの味方に決まってるでしょ!」

 この家の長女が何故か怒って言う。

 「あんなくそじじいの味方するのは、何でなんだ?」

 「いつも、干渉ばかりしやがって。」

 と、長女がいう。最近は、この家の母親と長女はよく、帰り時間が遅いとか遅くなるのに連絡がないとか、そんな口論ばかりしている。それで、この家の長女は腹を立てているのである。つまるところ、この家の父親の肩を持つのは、この家の母親自身が嫌いだからというものであって、私怨により客観的な判断をなし得ない人間の典型であろうか。

 「何でだよう? それはあんたが悪いんでしょ。帰りが遅くなるときはメールしろっていつも言ってるでしょうに!」

 この家の母親の批判対象が、この家の父親から長女の素行へと移動する。この家の長女は、「むかつく」と言い残して、自分の部屋へ行ってしまった。

 要するに、トウヘンボクにも、この家の長女という味方がいたのであって、完全に孤立しているわけではないのである、、、。   (続く)
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2006年08月21日

不倫物語〜その5〜

 「女と会ってたな?」

 ご飯を食べ終わった夜の九時頃であろうか、この家の母親が、この家の父親に言う。 

 「何のことだ?」

 と、とぼけた顔で振り返るトウヘンボク。普通に振り向いてもトウヘンボクであるのに、それがとぼけた顔をして振り向くのであるから、何と言おうか、、、中々形容しがたいものである。強いて言えば、飼主から餌をもらう前、その餌を放心して見つめる犬族の馬鹿面と似ている。

 「とぼけるんじゃない。こっちには証拠があるんだからねえ。」

 「証拠? どんな証拠があるんだ? あるなら出してみろ。ほら、出せないのか? ほら、やっぱりないんだろう。ないに決まっている。」

 「ないに決まっている」と言いながら、目の前にいるこの家の母親が何か出すのではないかと手の辺りを凝視している。

 「テープに録音してあるんだよ。車の中で二人が話しているところを。」

 この家の母親が得意そうに言う。

 「どれ、じゃあ、出してみよ。」

 「テープは隠してある。」

 「何だ? ないんだろう?」

 「相手は、○○さんという人だねえ。そう呼ぶ声が聞こえたよ。」

 この家の母親がそういうと、トウヘンボクはその出目金をさらに一瞬拡張させた。やはり人間というものは、動揺が顔に出るものだと、脇で見ていた我輩は思ったものである。

 「返せ! 返せ! どこだ? どこに隠した!」

 と、トウヘンボク。

 論より証拠とは、こういうことを言うのであろう。証拠を突きつけられた途端、さすがのトウヘンボクも追い詰められたようである、、、。 (続く)

 
posted by 我輩 at 18:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月18日

不倫物語〜その4〜

 「じじいの証拠つかんだ!」

 数日後、この家の母親が言った。「誰も協力してくれないから、自分で証拠をつかんだわけよ!」と、一人で興奮している。

 「どんな?」

 と、次女が尋ねる。

 我輩もそばで聞いていた。この家の母親の話は大体以下のような感じであった。

 まず、この家の母親は、携帯を見せないこの家の父親の不倫の証拠をつかもうと思いついた。そして、最初は、夜、一人で散歩しに行くこの家の父親の後を追って現場を押さえようとしたらしいが、これはどうもうまく行かない。何故なら、この家の父親も用心深く、後ろを振り返るので、すぐに見つかってしまうからだという。ちなみに、見つかってしまった時にどうしたかと言えば、構わず、この家の父親をどこまでも追って行ったらしい。これはもはや追跡というよりは、追いかけっこであったらしく、どうにか追手から逃れようとする
この家の父親と、逃がすものかと執念深く追ってくるこの家の母親とで、近隣をぐるぐる回っていたらしい。
 それで、この家の母親が次にとった行動は、車の後ろ座席でこの家の父親が夜車で出かけるのに乗じようというものであった。車の後ろでミイラのように仰向けとなり、シーツを被せて寝ていたらしい。が、これは、準備に手間をかけた割にはあえなく「何やってんだ?」と見破られたらしい。
 そして、最後に取った方法、それは、盗聴であった。会議用の何時間も録音できるテープをこの家の父親が夜出かけそうな時間帯に車に隠しておいたという。
 すると、案の定、この家の父親とその相手が会話をしているのが聞こえてきたというのである。

 「どうだ! これで証拠はつかんだ! 後は追い詰めるだけだ!」

 と、この家の母親が騒いだ。何も知らないこの家の父親が、のこのこと家に帰ってきたのは、その夜であった、、、、。(続く)
posted by 我輩 at 19:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする