2006年09月28日

お盆にて親族集まる(4)

 トウヘンボクの番といいながら、我輩は、こやつが何と話していたのか、忘れてしまった。何度か思い出そうと試みたが、無理であったし、そもそも、印象に残らない話であったのであるから、仮に思い出したとしても、大した話ではなかろう。加えて、以前まで、不倫につき夫婦で争っていた者である。思い出してやる必要もない。

 かろうじて覚えているのは、他の二人の話が子供世代の輩に何らかの教えを与えようとするものであったのに比して、トウヘンボクの話は、どうでもいい己の近況報告のような話であったような点である。

 そうそう、そういえば、「私は退職したら、友人の経営する画廊つきの喫茶店で、自由に絵を書かせてもらうことになっています。」などとトウヘンボクは言ってたなぁ。

   

 トウヘンボクの話が終わると、みな飲み食いしながら、談笑し始めた、、、。(続く)

 
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2006年09月19日

お盆にて親族集まる(3)

 次は長年企業に勤めた叔父公の話であったが、我輩は記憶力が乏しいため、忘れてしまった。唯一覚えているのは、

 「テレビなんか見てると、60くらいの人間が偉そうに話しているけど、おれもあんなふうに偉そうに話していいのかなあ、なんて思ってます。」

 などということを言っていたことくらいである。偉そうに話していいのかななどという以前にもう既に偉そうであるが、そこは還暦祝いでもあり、厳しく言及しないでおこう。

 そして、最後はトウヘンボクの番であった、、、。  (続)
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2006年09月12日

お盆にて親族集まる(2)

 その叔父公は、遠くを眺めるようにして話し出した。

「おれはずっと大学を卒業してから教師をしてきましたが、非常に充実していました。ここまでよくやったものだと感じています。今はジムでエアロビを習っています。健康のためにであります。」

 この厳めしい体格の叔父公が、ハイカラなリズムに乗って手足をバタつかせながらぴょんぴょんと跳ねているところを創造した我輩は、思わず、ぷっと思ったものである。

「エアロビといっても、恥ずかしいことなんて何もないんです。周囲は年寄りばかりですが、中には、恥ずかしいからやらないなりたくないなんて言っている人もいます。でも、おれはそういう人には、恥ずかしいことなんて何にもねえんだよ、あなたのところなんて誰も見てないよ、恥ずかしいと思うからは恥ずかしいんであって、普通にやってれば何にも恥ずかしいことはないんだよ、と言ってやるんですよ。」

 叔父公は続ける。最初の元校長の爺のあいさつよりは、具体的な経験であって面白い話である。

 「おれは、ずっと教師をやってきて今思うのは、若い人、今ここにもたくさんいますが、若い人には早く定職について働いてもらいたいと思います。今はフリーターとかニートなんて言葉がありますが、やっぱり働いてきて、今勤めを終えて、振り返ってみると非常に充実した気分であります。」

 叔父公は続けた。我輩は、今の叔父公の言葉は、いまだ定職にもつかずにふらふらしているこの家の長男にとっては、さぞ居心地の悪い一言であろうと思い、ふらふら長男の方を見たら、ふらふらは叔父公の言葉を聞くと、眉毛を上下に動かしたり、鼻の穴を拡大させたりして密かにふざけ出した。

 因みに、我輩の驚いたことには、この親族の中の子ども世代の中で、定職に付くべき年齢に達しながら未だ働いていないのは、5人中4人だったらしい。すなわち、この叔父公の話は、ふらふら長男のみならず、ふらふらしている他の者にも向けられていたというところであった。  (続く)
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2006年09月09日

お盆にて親族集まる(1)

 お盆のことである。

 この家の家族は、親戚みんなで集まるからということで都内の旅館宿泊へ行った。

 我輩は、つまらぬ会話しかできぬジョン公と二人で家にいるのも嫌だったので、旅館の方へ行ってみた。この家の家族の親戚にどんな人間がいるかも、やや興味のあるところであった。

 旨そうな料理の並んだ座敷を襖の間から覗き込むと、20人ほどの人間がいた。そして、その中の一人が演説のような言葉を述べている。誰かと思ったら、以前にも紹介したことのある元校長たる爺であった。
 
 が、その話の硬いこと、そして長いこと。「ええ、本日はこうしてお集まり頂き誠にうれしい限りでございます。」などと言い、五分も十分もどうでもいい話をしている。

 それにしても、旨そうな魚を目前にしながら、こんなつまらぬ話を聞いていられる人間の忍耐力には、やや敬服したものである。ここが我が猫族を始めとした動物と人間の大きな相違点であろうか。

 やっと爺公の話が終了し、みながやっと飯にありついた頃、

 「それじゃあ、還暦祝いの言葉を一つ、お三方に言ってもらいましょうか。」

 と、この家の母親の母親、即ち、ばあ様が言う。ばあさんの言う三人とは、今年で60才を迎えたトウヘンボクと、同じく60を迎えた近所の親戚の叔父公二人らしい。

 まず、トウヘンボクの隣に座っていた叔父公が「では。おれから。」と立ち上がり、話しだした、、、。   (続く)
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2006年09月07日

不倫物語〜終わり〜

 長きに渡り、不倫物語と題して書き連ねてきて、ここにおいて終止符を打とうと思うのであるが、実は、終わり言えるような完結的な出来事はないのであり、ただ、この家の父親と母親の間に冷たい雰囲気が漂っているだけなのである。

 トウヘンボクはといえば、呑気に詩などを書いている。何の詩かと思って覗き込んでみたら、宮沢賢治氏の『雨ニモ負ケズ』という詩が書かれた紙の横に絵を書いている。

 我輩は、呑気にしているトウヘンボクにどことなく腹が立ったものだから、トウヘンボクが部屋から出て行った隙に、落書きをすることにした。宮沢賢治氏には申し訳ないが、ちと詩の内容を訂正してみたものである。

 『雨にも負けず』

雨にも負け

風にも負け

雪にも夏の暑さにも負け

丈夫な不潔なからだをもち

慾はなく勿論あり

決して怒らずばれぬよう

いつも静かに笑っている女とメールをしている



一日に玄米四合と

味噌と少しの野菜猫の餌を食べ

あらゆることを

自分を勘定に入れずに

よく見聞きし分かったと思ったが

そして忘れず全部忘れた


野原学校の松の林の陰の

小さな萱ぶきの鳥のフンだらけの小屋にいて

東に病気の子供生徒あれば

行って看病カンチョウしてやり

西に疲れた校長あれば

行ってその稲の束を負い禿げ頭を撫で

南に死にそうな教頭あれば

行ってこわがらなくてもいい生徒も喜びますよといい

北に喧嘩や訴訟があれば

つまらないからやめろといいどれどれと見に行く




日照りの時妻に怒られては涙を流し

寒さの夏はおろおろ歩き

みんな家族でくのぼーとうへんぼくと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず馬鹿にはされて

ついでに子供にも相手にされず

そういうものに

わたしはなりたいおぬしはなっている


 我輩は、書き終わると一目散に逃げた。その後、部屋に戻ってきたトウヘンボクがどう思ったかは我輩の知ったことではない。   (完)
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2006年09月01日

不倫物語〜その7〜

 最近、トウヘンボクは、よく家の中を掃除している。タンスの中の服を取り出しては、一枚一枚丁寧にたたんだり、物置の中を整理したり、車のトランクの中を掃除したりしている。

 我輩は、最初、トウヘンボクはこんなにきれい好きだったかなと疑問に思ったのであるが、少し考えて、ははーん、そういうことか、とその似合わぬ行動の理由に気づいたのである。

 トウヘンボクは、この家の母親に掴まれた己の不倫の証拠たるカセットテープを探し出そうとしているのである。

 大体、この家の母親から着替えを出されぬ限り延々と同じをパンツを履き続け、背広の肩にはフケが目立ち、髪もモジャモジャであるトウヘンボクのような人間が、自主的に掃除を開始するはずがない。

 もし、あちこちと部屋の中を探し始めれば、「何探してるの?」と次女などに聞かれるかもしれぬから、誰にも気づかれぬように穏便な方法で捜査しているというところであろう。

 一見、掃除という善行に見せかけているところが、狡賢いものである。

 まさか、この我輩にもう見破られているとは、思いもしないであろう。我輩はお前如きのする行動なぞ、すべてお見通しなんや。黙ってて欲しければ、キャットフードの品質をレベルアップしろや。我輩の餌代、ケチるなや。
 (続く)
posted by 我輩 at 18:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする