この家の家族がみなテーブルについてこれからご飯を食べようとしていたのであるが、この父親が、
「みんな揃って飯を食えるのはいいことだ。これからみな大きくなったらこんなふうにはいかないからな。」
などと話していた。すると、この家の母親が、
「そうだ、そうだ。じゃあ、頂きます!」
と言って、みそ汁をずずっと吸った。すると、この家の父親は、
「馬鹿野郎、何でお前はいつもそうなんだ! 俺が「頂きます」と言うんだ! 俺が言うまで食うな、全く。」
と怒り出す。
「はいはい、わかりました。悪かったねえ。じゃあ、話を続けて下さいな。」
と、母親。
すると、この家の父親は、その母親の言葉が終わらぬうちに、
「頂きます。」
と、力強く言う。そして、周りを見てにやにやとしている。母親の言葉をさえぎって、先に頂きますと言ったのがうれしかったと見える。
そして、「女、出でて、家、滅ぶ。」と言って、ご飯をもぐもぐ食っている。
周囲の者は別段、何ともなく、ご飯を食べている。いつものことだから、もう気にも留めぬようである。

